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2012年2月22日水曜日

2012/2/11 東京日仏学院でのトークショー雑感

先日東京日仏学院で開催されたAnkamaのイベントレポートなぞ。
一週間経ってしまったので今更感は否めないですが、ま、それはそれ。
海外マンガ、アニメと言えば、のスカポン太さんがブログでまとめられているので
レポとしてはあちらの方が詳しいかも知れません。

はてさて。
お目当ては、wakfuシリーズ2本の上映と特別編2本の上映、あとは画集でも買えればと思って行ってきたんですが、こちらは品薄で手に入らず…
事前スケジュールより30分近く早く上映が始まったり、ちょっと企業イベントとしては緩い感じでしたね。

上映は日本語字幕のお陰で細かいニュアンスもだいぶ分かり楽しめました。日本の著名スタッフも参加して作った特別編は本編とはまた違ったベクトルで非常に見応えありましたし。

正直Dofusというゲームもwakfuの世界観もきちんと把握していないので、設定絡みの展開部分はちんぷんかんぷんでしたけど、初見層にも十二分に訴求力のある作品だと思います。
是非メディア化を!!

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…閑話休題。

さて、その上映の後に制作会社Ankamaのスタッフとシリーズ監督のOliver氏、
上記特別編監督の高橋さんを交えての日仏アニメゲーム事情についての
カンファレンスがあり、これが非常に考えさせられるものだったので
今年初の記事を起こしてみた次第です。

<以下印象的だった発言まとめ>
(うろ覚えメモと僕のフィルターを介しているので若干ニュアンス怪しいかもです)

<日仏のアニメ制作事情の比較>
◇高橋さん
・日本のアニメ制作現場の閉塞感と若い Ankama スタッフの元気の良さの対比
・現在の日本アニメは円盤(DVD/BD)を売るためのアニメとして存在している
  (かつてはおもちゃを売るためのものだった)
・現場に求められているのは「所有欲を掻き立てるようなアニメ」
  ただ見られるだけでなく、手元に置いておきたくなる付加価値が必要とされる。

◇Oliver氏/Ankamaスタッフ(多分)
・認知度(や売上も?)ラテン語圏以外ではまだまだ
・Ankamaはマンガ、アニメ、ゲーム全部インハウスで450人規模、平均25歳
・Ankamaはまず「世界」を作ろうとしている(ゲームデザインとして
   wakfuアニメもゲームでの成功がまずあって、そのファンに向けて作ったもの

・国の保護(文化事業への補助金を制作に利用、
   フランスの文化政策で国産のものが一定の割合になるよう重用される
・日本でのアニメ展開も視野に入れているが、既に完成しているものを
   現状のTVOAフォーマットに載せるのは難しい

⇒⇒⇒
高橋監督の「所有欲を掻き立てるようなアニメ」という表現。
ただ映像作品として優れているだけでは足らなくて、TVやネットなど一次メディアでは得られなかったもの(初回特典のグッズだったり、湯気やT光の下の何かだったり…)を円盤を購入することで手にする、ことを欲求させる、ということでしょうか。
ただ、それを作ることに現場(の少なくとも一部)は閉塞感を覚えているということも重要だと思います。
現場が好きに楽しく作ったものが必ずしも観る側、お金を出す側の欲求に見合うとは限らないのは承知しているつもりですが、ドラゴンボールやグレンダイザー(ゴルドラック;何度も連呼してたのでホント好きなんだろうな、と)を見て、それに憧れて会社を作ったという人たちの作った映像が、これだけ元気に満ちているのを見るとこの対比はとても印象的でした。


<アニメが世界中で見られるために必要な普遍性とは?>
(日本のアニメが世界で受け入れられている普遍性の根拠は?といった感じだったかも)
◇高橋さん
・動いてる絵があるとつい見ちゃう/CGが動くのとは何故か違う
・日本が唯一(最初に?)、その動いている絵を早く安く大量にTVに供給することができた
→結果として世界中に広まった
・最近は逆に、映像を見るための基礎知識や技術、約束事が増えてきて、
  作品を理解するための文法が作品の外に広がっている。
  このままだと海外で理解されず売れなくなる…と思いきや、意外に売れ続けてる
→世界には日本の漫画、アニメの文法を理解する人々が少数ながらも遍在していて、
  そこがマーケットとして機能している(この辺だいぶ主観混じってるかもです)
・がしかし、今の日本アニメを理解する人たちに向けて喜ばれるものを作ることが
  普遍性のあるものを作ることになるのか、そこは疑問、バランスの問題か

◇Ankamaスタッフ
・フランスでは動画は常に動いていなければならなかった。
  ストップモーションは未完成と思われる。フランスには動きのない能はない。
⇒多少コマ落ち(一秒間に動く絵が8枚とか;3コマ作画の場合)してても
  動いてることにしちゃう日本アニメとの対比のことかと。

⇒⇒⇒
広く世界に受け入れられるには、普遍的な何かがなくてはいけない、という思いが
質問の根底にあったのだと思います。
そして、おそらく殆どの制作者にとってはどこかでこの普遍性を求める意識があるとも。
(それは良い悪いでなく、普遍とはそういうものだからですが)

これに対しての高橋監督の答えが、またドライで面白かったのと、
現状のドンドンと特殊化する作品とその世界的受容に対して、
普遍性とはちょっと違うのかも、という感覚がこれまた印象的でした。

普遍性を追求するのか、特殊性を突き詰めるのか⇒特殊の少数偏在は普遍足りえるか
という考え方はすぐに答えの出るものではないにせよ、改めて考えてみたいテーマです。

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とまあこのように、予想以上に制作者側にとっても実りの多いイベントでありました。
Ankamaに留まらず、いろんな国の作品ともっと触れる機会が増えてくると良いですね。
アニメを理解したいがためにフラ語を勉強しだした人間がここにいるくらいですから、
なかなかどうして、文化交流としても有力だと思うのですよ。

2011年11月4日金曜日

HP dv6でopenGLが使えるようになるまで

5年ぶりに自宅PCを買い換えました。何と10年ぶりのノートです。前のノートを抱えて東京に出て来た時は、まさか自分がCG絡みの仕事をしているとは想像だにしてませんでしたね。

はてさて、購入したのはHPのDV-6100シリーズ、諸々カスタマイズ版です。今はもう型番が変わってるみたいですが、ここのラインナップですね。カスタマイズ内容は
・Window7 Pro 64Bit
・Intel Core i7 2720QM(2.2-3.3/6)
・15.6 inch モニターフルHD
・160GB SSD
・8GB DDR3-SDRAM
・Mobile IntelHD Graphics & Radeon HD 6770M


こんな感じで。
ストレージが物足りないのでUSB3.0で外付けを追加。無線LANもBluetoothもありのてんこ盛りです。数字だけならどこぞのMBPにも負けず劣らず、実際なかなか快適です。


さて、気持よく手持ちソフトをインストールしていたのですが、突然大問題にぶち当たります。愛用のCINEMA4D(64Bit)が、インストールしたものの起動しない。AfterEffects(CS4,CS5)は起動するもののOpenGLエラー連発でフリーズ。FLStudioは64Bit版でも通常動作するし、はてさて何が問題なのか…

そして見つけた驚愕の事実。なんとdv6は「OpenGLをサポートしていない」(”HP Announces OpenGL will NOT be supported by dv6 / dv7!”)
わざわざRadeon HD 6770M積むようなユーザーがopenGL使わないなんてこともない気がするのですが、どうやらそのようです。Radeon側では問題なかったのでそこまで確認していなかったのですが、これは大枚叩いて失敗したかと冷や汗モノでした。


で、更に検索すること数時間、仕事はすっかり手につかない中どうにか解決策を見つけたので、同様の事例に困っている方のお役に立てれば、と以下手順をまとめてみました。
(野暮ったいことですが、BIOS更新など以下の作業は自己責任で)

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1:BIOSアップデート
2:ドライバアップデート
3:BIOS設定
4:CCC設定

1:BIOSアップデート
オフィシャルでBIOSのアップデータが提供されているのでこれを適用します。(sp54024.exe:ver.F.1A)
これで、BIOSの設定によりグラフィックの切り替え機能を固定させることができます。

2:ドライバアップデート
念のためグラフィックのドライバを更新します。(WindowsUpdateだとこのケースに対応するドライバに更新できないとの情報がありましたが、僕のケースでは既に最新版になっていました)
この辺が、まとめて更新できて便利です。

3:BIOS設定
起動ロゴ時にF10でBIOS画面に。
"System configuration" ⇒ "Switchable Graphics Mode" で "Fixed"
これで所謂ハイブリッドモードとされるGPUの切り替えを止めることができます。

ついでに、滅多に弄らないBIOSなので、ファンクションキーも設定。
"System Configuration" ⇒ "Action Keys Mode" を "Enabled" から "Disabled" に。
これで、ファンクションキーを使うのにいちいち"fn"を使う必要がなくなります。F12使いつつマウス操作も可能に!
※BIOS抜ける際に保存を忘れないようにしましょう。

4:CCC設定
最後に"CCC(CatalystControlCenter)"を起動、「電力」⇒「切り替え可能なグラフィック」から「ハイパフォーマンスGPU」を選択することでRadeon側を固定使用できるようになります。
(「電力」⇒「PowerPlay」を有効にしていないと低SPEC側で固定されるという情報があった気がするのですが、出所を忘れてしまいました、済みません)
OpenGLの問題は、このソフト側でのGPU切り替えが上手くいってなかった事が原因のようですね。

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以上、手順まとめでした。最新機種ではBIOSアップデートも不要になっているとか。

ちょっと排熱に不安も感じるdv6ですが、無事OpenGL対応ソフトも起動し、なかなか良いコストパフォーマンスを見せてくれています。(何故かAE CS4のみOpenGLを認識してくれないのですが、そもそも使わないから良いか、という言い訳で逃げてしまいました)

2010年8月8日日曜日

[お仕事]劇場版CGアニメ撮影後記(絵作り編)

続いて、今回の劇場版で実感した絵作りの問題点について。
こちらは単純に僕の未熟さから来る失敗談なのだけど、記録しておくことで何がしかの役に立つかも、ということで。
余談だが、人のセミナー等に参加してみて、実は成功例よりも失敗例の方がより問題の本質を把握してもらい易いのではないかと考えている。幸か不幸か、失敗例には事欠かないのだ! (´;ω;`)

さて、今回僕は約20分の劇場版CGアニメーションに「撮影監督」として参加した訳だが、色々と知識、経験、技術が不足していたため問題が発生した。中でも一番問題だと感じたのは
「データ⇒フィルムに焼く際の変化を上手く吸収できなかった」ことである。

今回使用したのは富士のフィルム(型番も撮影所の方に伺ったのだが失念、ちゃんとメモを取っておけ)で、前回使用したのはコダックのフィルムだったと記憶している。
一度フィルムチェックという試し焼きをチェックする機会があったのだが、富士のフィルムはコダックのそれと比べて「全体的にコントラストが強めに出て彩度が高い、特に赤と青が鮮やかに発色する。つまり明るく派手な画面になる」という印象を受けた。

これを受けて、コントラスト、及び赤青中心に彩度を抑え気味にする処理を加えて本番のデータを納品したのだが、彩度に関しては監督からもOKを頂ける程度に調整できたものの、コントラスト、特に暗部の締りが激しく、暗く潰れてしまった箇所が何箇所か出来てしまった。
最終的には、現像の段階で撮影所の方に多少暗部を持ち上げて頂き、監督やプロデューサー、CGディレクターの方々からは特に気にならない程度まで調整はできたのだが、最終的に映像をハンドリングできていないという点で個人的には大きな反省点となった。

といったことをTwitter上でポロッと愚痴ったところ、早速先達の方々にご意見を頂けた。まとめると、
・「現場のモニタと焼いた後のフィルムの色味は必ず変わる」
・「フィルムチェックと現像所との打ち合わせは必須」
 (個人的には編集とチェック用の監督のモニタもあわせて調整したいところ)
・「シーン毎に焼き方の調整もして貰えることもある」
 (現像所によって違うだろうから、ある程度はこちらで対応できるようになりたいが)
・「暗部は特に難しい。RGB10以下は(30以下という声も;色深度の問題もあるだろうけど)、
 特に気を付けている」

大方予想通りではあったが、逆に言えばフィルムであれば常識だったとも言える。もっと事前に相談させて頂けば良かったと反省しきり。

次回(があればの話だが)はこうした点を考慮して、フィルムチェックの段階でこの辺の見極めができるような素材を準備し、焼き上がって「あれ、作業モニタの印象とぜんぜん違う」ということはないようにしたい。
また、例えば撮影所の方からあちらの作業環境のカラープロファイルを頂くことなどはできないものだろうか。最終出力が違う以上、100%揃えることはできないにしても、記憶と目分量に頼るよりは正確な画面設計が出来る気がするのだが…そうした点も踏まえて、事前の準備、関係各所との綿密な相談が必要だということだろう。

 

ちなみに、色指定、色彩設定の方々はこうした媒体の違いも考慮して色の設計をされるのだろうか。いや、それだとTVオンエア、DVD,BD販売の際問題になるか。となると、色の偏向のない状態でマスターを制作して、それを出力媒体に合わせて調整するのがやはり筋なのか。

今回の作品では、キャラの影はCGソフト側でレンダリングされた時点で既にキャラに描き込まれ、後からそのコントラストや色味を調整するのは難しかったのだが、そこを後からでも調整可能にすることで、上記のような場合での対応のしやすさも変わってくるかもしれない。
と同時に、ますます後工程での絵作りの技術と全体の管理能力が要求されることにもなる訳で、自らハードルを上げることにもなる。他所の部署の方々を説得しうる材料をきちんと準備できないと、「素材の調整はお任せ下さい」と自信を持って言うことは難しい。

[お仕事]劇場版CGアニメ撮影後記(制作編)

またしても久方振りの更新…この程度の文章量ですら意識していかないとまとめるモチベーションが得られない自分が情けない。

さて,愚痴も程々に。
7月一杯関わっていた20分の劇場版CGアニメ制作が無事一段落したので、そこで得られたこと、考えたことなどをまとめておくことにした。「記録のない活動に意味はない」とは誰の名言だったか。備忘録備忘録… φ(・ω・ )


自分の担当する「撮影(コンポジット)」というセクションは、映像制作に絡むほぼ全ての素材が集まるところなので、「実際にどのような絵作りをするか」というだけでなく「その大量の素材をどのように捌くか」が最終的な絵の完成度にも大きく影響する。

それ故、このセクションの先人たちは(そのメインツールであるAdobe After Effects使用者の中でも特筆して)スクリプトの使用などによる作業の自動化、効率化を追求してきた。自分もその流れに与してきた一人なので、ここでは今回の劇場版制作に於ける「如何に大量の素材を効率よく管理するか」という点に絞ってまとめてみる。

===
◆如何に効率良く撮影素材を管理するか
■1:カット表による管理(Excel,VBAマクロの使用による半自動化)
■2:AEscript によるコンポジションの自動セットアップ&各種補助ツール
■3:まとめ
===


■1:カット表による管理(Excel,VBA使用による半自動化)

アニメ撮影、コンポジットの現場ではどこでもカット表を自作しているかと思うが、ウチも制作さんから貰うカット表をベースにオリジナルの「撮影仕様」カット表を作成している。

カット表イメージ

「今回の作品は全部で何カットあるのか」
「カット毎に必要な素材は何か」「その素材はいつ届いたのか」
「そのカットで必要な処理は何か」「そのカットは現在どのような状態か」

といったことが一覧できるようになっている。(今回の作品は20分強で350カット程だったので,劇場作品としてはかなり小規模)
各カット、各項目に対する入力も半自動化され、任意のタイミングでボタンクリックすることで指定フォルダ以下の該当素材を検索、チェックできる。と同時に、最上段の全体集計セルも更新されその時々の全体像把握をサポートする。


別のシートには全素材のファイルパス(VBAによる自動取得)も格納されていて、後のコンポ自動作成に使用するつもりだったが…素材の揃いが悪く結局使用せず。一番苦労してVBA書いたのに…(´・ω・`)

このカット表の最大の目標は、
"現在の「リアルタイムな」全体像を把握、共有する" 
ことにある。
その意味ではそこそこ役割は果たしているのだが、「柔軟性」という点にまだ不満が残った。


■2:AEscriptによるコンポジションの自動セットアップ
   &各種補助ツール

★"baseCompSetUp.jsx":カット毎のAEPファイルを半自動構築。
        素材読み込みと配置、レンダー設定、シーン毎のプリセット適用
★"shadowSetUp.jsx":キャラ毎に追加される影処理の自動化。
★"BgImport.jsx":遅れて上がってきた素材を差し替える作業を自動化。
★"watchReduceSave.jsx":作業の終わったカットを整理してレンダーサーバに送る
        一連の処理を自動化。
★"retakeSetUp.jsx":リテイク用の素材読み込み、出力設定の修正などの自動化。
★"openNextComp.jsx":規定のフォルダでプロジェクト選択ダイアログを開く。
ファイルの読み込み後など、内部パスが変更された場合の対処用。

スクリプト(ランチャ)イメージ

主に使ったスクリプトは上記6つ、その他細かいものも合わせれば計10個程、作業の進展に合わせて同時進行で書き上げたものも幾つかある。
汎用スクリプト"LaunchPad"にボタンとして登録し、クリックで起動する仕組み。


スクリプトで自動化する処理の基準は、「同様の作業の繰り返し」である。頭を使わず絵を見なくても「処理」出来る作業はどんどん自動化対象とした。その方が圧倒的に速く、ミスも少なく、また作業者毎の差が減少するので修正作業が簡便化する。それで浮いた時間を作業者の「絵作り」の時間に充てたいのである。

また、撮影監督として各カット毎の作業内容をチェックする際,少なくともスクリプトで担当した処理に関してはある程度流して見ることが出来るというのは意外と大きい。


結果として上記目的に関しては十分に達成できたと考えている。少なくともこれら自作スクリプト群が無ければ専属スタッフ2名での作業完了は不可能だった。
作業開始当初は仕様通りに上がってこない素材に由来するバグも頻発したが、自分で作ったツールというものはこうした場面で柔軟に対応できるのが売りである。バグは無いに越したことはないのだが。

一方で、今回明らかになった問題点は撮影作業に自動化を組み込めば組み込むほど、作業者が無思考に陥りやすいということである。(より正確には、「自動化して時間を空けても頭を使おうとしない人は変わらない」ということか。)
当初の目的は、単純作業の自動化、省略により「絵」に向き合える時間を捻出し、完成映像のクオリティを底上げすることにあったのだが、「スクリプトを次々と適応していくという単純作業」に終始してしまうケースが散見された。
ここに関しては自動化云々とは別次元、「どんな映像制作チームを作るか」、というマネジメントの問題であるのだが。



■3:まとめ

今回の制作システムではExcelを基幹として、これにスクリプトによる各種ツールを組み合わせることで「大量の素材の効率的管理」、「リアルタイムな全体像把握」を目指したが、現時点で自分がやれそうなところへはある程度手をつけきった感がある。勿論、細部に手を加えるべき余地は沢山残っているのだが、少なくとも、連日のように更新される素材を見失うこともなく、全体像が把握できずにパニックになることもなかった。


しかし一方で、粗も見えてきている。
まずはカット表の「柔軟性」。短期決戦の場合、素材の更新は非常に激しくなるのでその形態がこちらの想像を超えることがままある(上がってくる素材の一部だけ使って、とか)。
現状のカット表は自動化を進めるトレードオフとして、ローンチの段階でかなり枠組みを固定してしまっているため、その変化球に全て答えるのは難しい。
今回の劇場版では、プレーンなエクセルの表と手書き(!)の表でまかなった。図など自由な記号を書き込める手描きの表はなかなかどうして侮れないが、アーカイブの問題などもある。そして何より、僕の金釘流のメモを渡されたスタッフはさぞ閉口したことだろう。


もう一つ、こうした表は見たい時に見たい情報がすぐに見られることが最低条件だが、同時に余計な情報はフィルタリングして目に入れないようにすることも大切である。
となると、イメージとしてPhotoshopのように多重レイヤーを保持し、そこから平常時は管理者の見せたい情報を表示、各ユーザがより詳しい情報を必要とする時は(その人のアクセスレベルに従って)そのレイヤーの中から必要な情報をソートして表示する、という仕組みが便利ではないだろうか。
そうした、「立体構造を持ったデータベース(DB)」を構築したいと考えている。表面には現在リアルタイムの必要な情報(管理者にとっては全体像の把握、作業者にとっては各カットの作業に必要な全ての情報)を、その裏に時系列的奥行きを持ったDBはどうだろう。その作成にExcelが最適なのか、まだ検討段階であるのだが。


更に、自動化を進める上で見えてきた問題点として「自動化がかえって目的意識の共有を阻害し、作業者の思考停止が進む」ということもあるのだが、それはまた別立てで考えたい。


という訳で、「如何に大量の素材を効率よく管理するか」という点に着目した感想はここで終了。
未来の自分に、そして同業の誰かの役に立ち得ただろうか。

2009年10月3日土曜日

2009収穫祭(3)

続いてもう一つ、今回の経験を通して考えた「アニメ撮影における映像表現的側面」について。

・素材か、作品か
撮影という部署は各カットを構成する全ての素材が集まるため、僕はこれまでそれらをあくまで「如何様にでも調理可能な素材」として見てきた。が今回のように沢山の人が参加する作品に参加できたことで、この考え方は少々傲慢ではなかったか、と反省している。
つまり、撮影にとっては素材に過ぎなくても、それを制作した人にとっては大事な完成品だった、ということだ。全く弄らない、ということは無いにせよ、ある程度見栄えに手を加えるのであれば、事前に確認を取っておくべきだったかもしれない(先に挙げたコミュニケーションの問題も絡んでいる)。

どこまで素材を活かすのか、どこまでそれに手を加えるのか。これは(少なくとも僕にとって)いつも頭を悩ませる問題である。きっとその都度、監督、演出の意図を理解し、最善のアウトプットを心掛け、共にそのカットを作る担当者とすり合わせていくことになるのではないか。

・インプットとアウトプット
無い袖は振れない。自分の中に存在しないイメージは決して作り出せない、ということである。アウトプットは実はインプットと殆んど同義だから、如何に多くのイメージを自分の中に取り込んでいくか、ということが撮影としての幅を広げることに直結してくると言えるだろう。
僕は果たして見えているだろうか。自分の言葉で語れなくては言葉を理解したことにはならないのと同じ意味で、そのイメージを理解できているか。結果は一目瞭然である。

インプットすべきもの、演出指示もその一つ。カメラによる撮影時代から確立された「パラ」、「ダブラシ」、「つけパン」といった符丁は、業務をこなす上では一通り身に付けておくべきいわばマナーのようなもの。
しかし、マナーはマナーで身に着けつつも、そこからはみ出た行動が全く出来ないのでは、映像表現もまた凝り固まった時代錯誤のものになってしまいはしないか。現状は、かつての「撮影台の模倣」という一つの約束事に過ぎない、ということを意識のどこかに残しておきたい。

また、先日のプレゼンにて「カラーマネージメント」の問題が指摘されていたが、恥ずかしながらそこまで正確に問題を把握していなかった。多様化した映像再生環境においてどこをターゲットにした絵作りをしていくか、知らなくては、考えて身に着けていかなくてはならないものは幾らでもある。


以上、長い長いまとめひとまず終了。正直今回の仕事の出来栄えは(自分の領分に限って言えば)赤点ぎりぎりだったと思っている。関係者の皆さんゴメンナサイ。
がしかし、これを契機に色々考え、知り、得るものは十二分にあった。いつの日かこれをアウトプットする機会を与えて貰えれば嬉しいです。

2009収穫祭(2)

では前回ポスト分の説明をば。

■1:制作的側面
・管理の効率化、自動化はもはや必須事項(例えばExcelの利用)
・部署内での効率化では効果は限定的、制作全般に渡るシステム構築が理想
・ツールのプロトタイプ化

先日のプレゼンを見ていて思ったのが、現状各アニメ撮影現場においてデータ管理はExcelが主だということ。勿論うちもそうだし、昨日買ったCGWORLD見たらゲーム会社でもEXCELの事例があった。圧倒的事例数が魅力だということか。

そのエクセルも基本機能のみ使って只の製表ソフトとしていては宝の持ち腐れである。やはりVBAを使ってのファイルアクセス(外部データの読み書き)や自動更新によるリアルタイム管理の活用など、「機能に使われるのではなく、ツールとして使いこなす」ことが必要かと思う。
特に今回の劇場版のように大量のデータ(総カット数1400CUT,総データ量1TB弱)を管理するには、こうしたツールを使った自動化は効率の面でも正確性の面でも不可欠だ。つまり、映像制作においては如何に大量のデータを高速、かつ正確に管理するか、という能力も必要となって来る訳である。

勿論、全体的なデータは制作さんが管理してくれるが、そのデータのフィルタリング、及び撮影の内部データの管理はやはり部署内で行うしかない。
その際、(得てして映像制作従事者はこういったデータ管理とか数字とかに苦手意識が強いので)無味乾燥なデータの羅列ではなく、視認性を強めるなどデザインにも気を配れると、仕事場の空気も変えられる気がする。逆効果もあるので諸刃の剣なのは言うまでも無く。

そして、これら管理ツールの機能を機能毎に細分化して、エフェクトのプリセットのようにライブラリ化しておくところまで進めたいと考えている。そうすれば、また新しいプロジェクト毎に0からシステムを構築する必要もなくなるので、そこでの効率化も図れるだろう。
同時に、機能毎に整理されたスクリプト、ツール群は新しくそれを勉強、利用しようとする際の敷居も下げてくれないか、と期待している。0からシステムを組むのは無理でも(勿論、それを勉強しようとする姿勢は絶対に必要だと思うけど)、それを組み合わせること+αで望みの機能が得られるのであれば、自分もやってみようという気に・・・なってくれないかな。


さてここまでは撮影部署内での効率化の話だが、当然アニメ制作はこれ以前、以降にも大量の工程があるわけで、連携が取れていなくては良い物は作れない。
僕は「制作システム自体が制作者の思想を反映する」と考えていて、つまり「各部署の連携が取れてビジョンを共有できるようなシステム」は、「その制作体制を作り上げる存在がゴールを見失わず、それを共有することが大切だと考えたことの何よりの証明」だ、ということである。文字にしてみると何を今更、といった感があるけれど。
混乱する現場とは即ち、指揮官、およびスタッフに明確なビジョンが共有されていないことの現れである。あなたの現場はどうですか?

今回、劇場版の制作に当たっては撮影のみを請け負うスタイルだったのでなかなか制作システムにまで関与することは出来なかったのが反省点。他部署にまで意見するのは難しいけれど、敢えてそこは踏み込むべきなのだと思う。PC上で映像を作ることだけが映像制作ではないのだし。
細かなところではファイルの命名規則から、各カットの各素材が今、どこでどのような状態にあるか共有する手段まで、デジタルアニメ制作が一般化した現在においてシステムの共有は不可欠だ、という意識を共有することが重要であるように思う。


・コミュニケーションの重要性
・各工程における到達点をそれぞれの段階の作業者に明示しておく

上でも触れたが、コミュニケーションの重要性も今回再認識させられた。部署内であれば素材更新の連絡から各カットの最終形のイメージまで、交わされる情報量は細に渡り、かつ膨大である。
特に終盤は修羅場と化し、時間の無い中で微妙なニュアンスを求められるため意識の共有は不可欠で、これらは一朝一夕では醸成出来ない。普段から言葉を交わし、意識を共有するパイプを太くしておくことを心がけたい。
…なんていうと肩が凝りそうだけれど、何のことは無い。せっかく同じ場所にいるんならちょっと一声掛けて、そのうち好き嫌いの話でもしてみましょ、てな感じで。
これらを円滑にするインフラとしてのツール開発も勿論必要だが、決定的なのはそこで交されるものの方であるのは言わずもがな。

直接のやり取りが難しい他の部署とのやり取りであれば、共有すべきイメージをある程度明示することは更に重要になってくる。
例えば、各工程の注意点、到達点を明示しておく。大規模なプロジェクトともなれば初めて参加するスタッフも多いため、細かな仕様まで確認を任せるのは非効率だし危険でもある。押さえ所を最低限に明示しておくのは効果的だと思う。僕のように余計なところまで口を出さないようご注意を。
正直この作業は結構面倒だけれど、ここをいい加減にすると後で泣きを見る、絶対。間違いない。


・思考停止の防止(何を考え、何を自動化するか)
僕は今更言うまでも無く効率優先の姿勢をとっているが、かといって何から何までエクセルで自動化すれば良いじゃない、とまでは思わない。
物の管理、コミュニケーションツール、作業データの基本セットアップまでやろうと思えば結構なところまでボタン一つで出来るようになるが、そもそもこの効率化は作業における人為的ミスを減らし、限られた時間をやりくりして少しでも映像制作それ自体へ手を掛けられるようにするのが狙いである。自動化、効率化が主目的になってしまう危険性は常に意識すべきだと思う。
また、システムの構成員であり、ツールを使うスタッフも、気をつけないと只ボタンを押していくだけの機械になってしまう。そもそもの始まりと目指すべき到達点を見失わないようにする意味でも、上に挙げたコミュニケーションは有意義である。

以上、アニメ撮影の「制作的視点」から見た現状分析。いつもの悪癖で長くなってしまった。
要はアニメを作るに当たって、どこまで見通せているか。そしてそのために必要なものは何だと考えるか。それを(ツールを介した)システムとして実現していけるか。そこがアニメーションを作る際の「制作的」側面から見たポイントなのだと思う。
ということでした。

2009年9月3日木曜日

2009収穫祭(1)

初めてフルで撮影監督業務を担当した劇場版アニメが先日公開に。興行的にはずいぶんと順調のようでなにより(制作期間を考えると、費用対効果は抜群だね!)。

出来栄えは観客の子供たちに聞くとして、この折角の経験を「良き思い出」で終わらせるのは勿体無い。今後の自分、どこかの誰かのために少しでも糧になれれば、ということで思いつく限りまとめてみることにした。
(この時期になったのは僕の余りの筆不精っぷりと、あと何だかんだで公開されてからの方が良いのかなあ、というチキンハートのせいです)


どこかの誰かのためにも、という発想が産まれたのにはもう一つ理由があって、上記の作業が一通り終わった絶妙のタイミングで、アニメ撮影業界の飲み会(と称した大プレゼン大会)に声を掛けて頂いたことが大きい。

発起人Terraon氏の溢れんばかりのバイタリティと自由な発想力、先輩たちの(技術は勿論)意識の高さなど非常に衝撃的経験だった。それはもう、同業者を名乗ってよいのか半分本気で不安になった程に…
そこで(深夜3時の二次会の席で)大先輩から言われて、現在僕のさまざまな行動上の指針となっているのが、

「表現には『指向性』があり、(ただ漠然と表現するのではなくて)それをもっと突き詰めないといけない(アルコール分を飛ばして意訳)」

ということ。
メインの映像制作においても勿論そうだし、先日のようなプレゼンも然り。ブログやtwitterといったツールによる表現にも当てはまるだろう。このブログは現状アニメ撮影における技術的な傾向が強いので(本当はもっと色気のあるネタも書いてみたいところだけれど)、見て頂ける方もその手の人達、と勝手に想定している。そんな人達にとって何かしらの参考になれば本望だ。

* * *
ちなみに、アニメの制作過程をご存じない方向けに簡単に説明すると、ここで言うアニメの「撮影」とは、様々な現場で制作された「アニメの画面を構成する素材(=キャラクターの絵、背景の絵、etc)」をコンピューターを使って1つに合成する工程を指す。
「撮影」というカメラ用語(?)をいまだに使うのは昔、絵を描いたセルロイドを重ねたものを実際にカメラで撮影していた時代の名残である。
この「撮影」という言葉から良くも悪くも逃れられないところに現在のアニメ撮影業界の問題が潜んでいると思うのだが、それはまた別の話。

今回僕が担当したのはこの撮影というセクションを統括する「撮影監督」という部分。
* * *


閑話休題。
以下、「アニメ撮影」という部署に於いて便宜的にワークフロー管理などの「制作的側面」と撮影の主眼である「映像表現的側面」に分けて、それぞれの要点をまとめてみた。

■1:制作的側面
・管理の効率化、自動化はもはや必須事項(例えばExcelの利用)
・部署内での効率化では効果は限定的、制作全般に渡るシステム構築が理想
・ツールのプロトタイプ化(?)により作業者各人が能動的に制作システムに参加できるようにする

・制作管理と映像管理の分立

・コミュニケーションの重要性
・各工程における到達点をそれぞれの段階の作業者に明示しておく
・思考停止の防止(何を考え、何を自動化するか⇒システム構築者の「アニメ撮影への思想」を反映)

■2:映像表現的側面
・素材か、作品か
・インプットとアウトプット


長くなりそうなので、詳しいことは次回説明していきたい。

2009年8月31日月曜日

一仕事を終えて(前フリ)




大きな仕事が一段落。
この週末で放っておいた家事を整理しましたが、いやはやひどい有様。
とりあえず象徴的な冷蔵庫の中身をご紹介。
冷凍庫には氷のみ、冷蔵庫にはちっとも減らない「電気ブラン」一本。

…どんな酒飲みやねん。
(ちなみに僕は全くの下戸ですよ)

このお休みのおかげで今はもう少しだけまともになりました。
さて、気を切り替えて日々の仕事に戻りつつ、今回の貴重な経験を
まとめる作業に入ります。

2009年6月7日日曜日

見てきました「Cirque du Soleil ”Zed”」

先週末にウチの会社企画で舞浜まで行って見てきました。

Cirque du Soleil ”Zed”

いやあ、こういう目的があると仕事が捗ります。
十数年ぶりに舞浜駅を見て、そのあまりのメルヘンっぷりとミスマッチな「JR舞浜駅」の文字が印象的でした。

閑話休題。
当日は突然の電車遅延もあって時間ギリギリで到着。
5分前の入場で客席はほぼ満員、Zedの為に作られたという常設シアターは、ステージと客席がほぼシームレスになっており、客席の勾配も自然で全体的に一体感を感じる良いデザインです。
「古代の天文観測儀(アストロラーベ)からインスピレーションを得てデザインされた」ということでさもありなん。勿論本編の内容もすばらしいのですが、個人的にはこのステージセットを構築できた段階で半分は成功が約束されたようなものだと思います。
(がしかし、このステージが真価を発揮するのは幕が開いてからなのですが…そこは各人の目で)

途中休憩を挟みますが、一度動き出すと時がたつのはあっという間。もう、舞台を見ているんだか演劇なんだかサーカスなんだかだんだん分からなくなってくるけれど、とにかく楽しい。Exciting!!というのが一番しっくりくる感じです。ジャンルは良く分からないけれど、要はエンタテインメントなんだな、と。
超一流のアクターによる誤魔化しようの無いリアルタイムなパフォーマンス、それを支える確かな演出、そして観客に見えないところで駆使されているであろう膨大な技術。このステージを成立させる為にどれだけの人たちがそれぞれ異なった能力を注ぎ込んでいるのだろうか。その場の興奮から一呼吸おいて考えてみると、ちょっとクラッと来ますね。

映像業界の末席に連なる身としては、やはりビジュアルな演出が気になりました。今回特に上手いなあ、と思ったのは光と影のコントロール、そして舞台の構造を巧みに利用した多層的展開です。以前Terraon氏が「多層エンターテインメント舞台」と書いていましたが、まさにそんな感じです。空間も、演出も、時間すらも?同時多層的に展開され、観客を魅了して止まない。言うは易くも行うは難し。それを非常に高いレベルで見せ付けられた感じでした。

そしてもう一つ、音楽について。Zedでは基本音楽も一つのパフォーマンス要素として扱われているようです。ドラムやギターといったバンドスタイルからパーカッション、バイオリンといったソロスタイルまでが時に舞台上を駆けながらアクターたちと競演している。その音楽は時にアクター以上に雄弁で(バイオリンのノリノリっぷりなんてもう!)、音による「人々のパッションを纏め上げる力」を十二分に実感できる光景でした。
(しかしアクターさんたちはあんなテンポのずれた手拍子の中でよく集中力が切れないもんだ、と余計な感心もしたり)
休憩時間に流れていた音が妙に気になったのですが、あれ何だったんだろう?ヴィブラフォンじゃないの?という指摘を社内の若い子に聞いたんですが。ご存知の方、教えて下さい。

総じて、非常に楽しい時間でした。何かしら仕事に活かせるものを得てやろう、といったちっぽけな意図は舞台の幕が開いた途端にどこかに行ってしまいましたが。それも含めて、フィードバックフィードバック。
エンタテイメントに関わる人は体験しておいて損は無いと思います。
自分ももう一度…行けるかな???