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2009年10月3日土曜日

2009収穫祭(2)

では前回ポスト分の説明をば。

■1:制作的側面
・管理の効率化、自動化はもはや必須事項(例えばExcelの利用)
・部署内での効率化では効果は限定的、制作全般に渡るシステム構築が理想
・ツールのプロトタイプ化

先日のプレゼンを見ていて思ったのが、現状各アニメ撮影現場においてデータ管理はExcelが主だということ。勿論うちもそうだし、昨日買ったCGWORLD見たらゲーム会社でもEXCELの事例があった。圧倒的事例数が魅力だということか。

そのエクセルも基本機能のみ使って只の製表ソフトとしていては宝の持ち腐れである。やはりVBAを使ってのファイルアクセス(外部データの読み書き)や自動更新によるリアルタイム管理の活用など、「機能に使われるのではなく、ツールとして使いこなす」ことが必要かと思う。
特に今回の劇場版のように大量のデータ(総カット数1400CUT,総データ量1TB弱)を管理するには、こうしたツールを使った自動化は効率の面でも正確性の面でも不可欠だ。つまり、映像制作においては如何に大量のデータを高速、かつ正確に管理するか、という能力も必要となって来る訳である。

勿論、全体的なデータは制作さんが管理してくれるが、そのデータのフィルタリング、及び撮影の内部データの管理はやはり部署内で行うしかない。
その際、(得てして映像制作従事者はこういったデータ管理とか数字とかに苦手意識が強いので)無味乾燥なデータの羅列ではなく、視認性を強めるなどデザインにも気を配れると、仕事場の空気も変えられる気がする。逆効果もあるので諸刃の剣なのは言うまでも無く。

そして、これら管理ツールの機能を機能毎に細分化して、エフェクトのプリセットのようにライブラリ化しておくところまで進めたいと考えている。そうすれば、また新しいプロジェクト毎に0からシステムを構築する必要もなくなるので、そこでの効率化も図れるだろう。
同時に、機能毎に整理されたスクリプト、ツール群は新しくそれを勉強、利用しようとする際の敷居も下げてくれないか、と期待している。0からシステムを組むのは無理でも(勿論、それを勉強しようとする姿勢は絶対に必要だと思うけど)、それを組み合わせること+αで望みの機能が得られるのであれば、自分もやってみようという気に・・・なってくれないかな。


さてここまでは撮影部署内での効率化の話だが、当然アニメ制作はこれ以前、以降にも大量の工程があるわけで、連携が取れていなくては良い物は作れない。
僕は「制作システム自体が制作者の思想を反映する」と考えていて、つまり「各部署の連携が取れてビジョンを共有できるようなシステム」は、「その制作体制を作り上げる存在がゴールを見失わず、それを共有することが大切だと考えたことの何よりの証明」だ、ということである。文字にしてみると何を今更、といった感があるけれど。
混乱する現場とは即ち、指揮官、およびスタッフに明確なビジョンが共有されていないことの現れである。あなたの現場はどうですか?

今回、劇場版の制作に当たっては撮影のみを請け負うスタイルだったのでなかなか制作システムにまで関与することは出来なかったのが反省点。他部署にまで意見するのは難しいけれど、敢えてそこは踏み込むべきなのだと思う。PC上で映像を作ることだけが映像制作ではないのだし。
細かなところではファイルの命名規則から、各カットの各素材が今、どこでどのような状態にあるか共有する手段まで、デジタルアニメ制作が一般化した現在においてシステムの共有は不可欠だ、という意識を共有することが重要であるように思う。


・コミュニケーションの重要性
・各工程における到達点をそれぞれの段階の作業者に明示しておく

上でも触れたが、コミュニケーションの重要性も今回再認識させられた。部署内であれば素材更新の連絡から各カットの最終形のイメージまで、交わされる情報量は細に渡り、かつ膨大である。
特に終盤は修羅場と化し、時間の無い中で微妙なニュアンスを求められるため意識の共有は不可欠で、これらは一朝一夕では醸成出来ない。普段から言葉を交わし、意識を共有するパイプを太くしておくことを心がけたい。
…なんていうと肩が凝りそうだけれど、何のことは無い。せっかく同じ場所にいるんならちょっと一声掛けて、そのうち好き嫌いの話でもしてみましょ、てな感じで。
これらを円滑にするインフラとしてのツール開発も勿論必要だが、決定的なのはそこで交されるものの方であるのは言わずもがな。

直接のやり取りが難しい他の部署とのやり取りであれば、共有すべきイメージをある程度明示することは更に重要になってくる。
例えば、各工程の注意点、到達点を明示しておく。大規模なプロジェクトともなれば初めて参加するスタッフも多いため、細かな仕様まで確認を任せるのは非効率だし危険でもある。押さえ所を最低限に明示しておくのは効果的だと思う。僕のように余計なところまで口を出さないようご注意を。
正直この作業は結構面倒だけれど、ここをいい加減にすると後で泣きを見る、絶対。間違いない。


・思考停止の防止(何を考え、何を自動化するか)
僕は今更言うまでも無く効率優先の姿勢をとっているが、かといって何から何までエクセルで自動化すれば良いじゃない、とまでは思わない。
物の管理、コミュニケーションツール、作業データの基本セットアップまでやろうと思えば結構なところまでボタン一つで出来るようになるが、そもそもこの効率化は作業における人為的ミスを減らし、限られた時間をやりくりして少しでも映像制作それ自体へ手を掛けられるようにするのが狙いである。自動化、効率化が主目的になってしまう危険性は常に意識すべきだと思う。
また、システムの構成員であり、ツールを使うスタッフも、気をつけないと只ボタンを押していくだけの機械になってしまう。そもそもの始まりと目指すべき到達点を見失わないようにする意味でも、上に挙げたコミュニケーションは有意義である。

以上、アニメ撮影の「制作的視点」から見た現状分析。いつもの悪癖で長くなってしまった。
要はアニメを作るに当たって、どこまで見通せているか。そしてそのために必要なものは何だと考えるか。それを(ツールを介した)システムとして実現していけるか。そこがアニメーションを作る際の「制作的」側面から見たポイントなのだと思う。
ということでした。

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