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2010年1月17日日曜日

[書籍] 「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」読了。

「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」岩崎 夏海(著)を通勤がてら読み進めていた。

あとから気づいたのだが,著者ははてな界隈では有名な方。宣伝文句や著書の中であえてそこに触れないのは作品単体としての価値に自信があるからか。

恥ずかしながら僕はドラッカーも良く知らなかった訳だが,読み始めて直ぐにアマゾンに探しに行ったコトは告白しておこう(そして在庫切れであった…)。この本は著者や表紙や妙に長いタイトルを気にしなくても十二分にオススメ出来る良作だと言えると思う。

内容は、とある理由で女子マネになった主人公が野球部を甲子園に連れて行くことを「決意」し,その助けとするドラッカーの「マネジメント」を適宜解説して行く,という流れ。
正直、導入部は文章が妙に簡潔でそっけなく(≒素人ぽく見え)、ドラマ部分も紋切り型,というかキャラ造形,展開が先読みできて、単なる解説書という印象でしかなかった。

が、本家「マネジメント」をまだ読んでいないので何とも言えないが,企業経営のバイブルとされる(??)「マネジメント」を高校野球の女子マネに当てはめる,という発想がそもそも卓越である。
「顧客」「組織の定義」「マーケティング」と言った,本来高校の部活動とは縁の無さそうな用語を主人公の活躍と共に具体化して行く。その翻訳作業を女の子が読者と同じ目線で進めていく点がドラッカーの解説書としての面目躍如たるところだろう。

やがて「マネジメント」の理解が深まり,効果が見えてくると物語自体も滑らかに動き出す。この相乗効果が狙ったものなのか分からないが,この辺まで来るともう「解説書」というよりは普通に物語を読んでいる感覚になれる。オチもなかなか気が効いていて,終わってみれば大満足の1冊だった。


さて,現実に戻ってこれを活かすにはどうしたら良いか。
自分個人,会社の部署,会社全体,そして更には業界全体まで。

僕は(少なくとも商業的な映像制作に関しては)私小説的な個人ではなく、集団,組織での制作を基としているので、組織の「マネジメント」という発想は(この本を読んだ今としては)不可避のものと捉えている。

しかし,ことアニメ業界というものはとかく集団戦が苦手で(それ故スーパーヒーローも現れやすい)、今でも現場では組織戦術の基礎的な概念も希薄である。ましてや「戦略」と呼べるものを明示出来るものがどれだけいるか。

が,一方ではこうした現状に異を唱え、組織的,効率的に制作を進めて最終的な「映像制作」をより良いものにしようという動きも勿論ある。僕も当然そうありたいと願っている。
そうした考え,即ち「集団を組織し,その集団の旨みを引き出して最大限の結果を引き出す」ことを意図する立場においては,この本は色々と参考にすべき点が多いと思う。

個人的に今年は,組織的「戦術」から「戦略」を意図していたので,そのスタートに当たってこの本に出会えたことは大きい。次は本家に手を伸ばしてみよう。アマゾンは再入荷を急がれたい。

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