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2009年10月25日日曜日

スクリプトの日々

裾野を広げつつ、フィードバックを得るため、ついでに自分もスクリプトに慣れるために会社の社内掲示板にAfterEffectsスクリプト目安箱みたいなスレを立ち上げてみた。

以前作った”CompBuilder”みたいな大掛かりなものでなくて、
「こんなことが出来たら、AEでの作業がちょっと便利に」程度のものをササっと書いてLAN上にアップする。

とにかく敷居を下げて「こんなこと、チャチャッと出来ない??」という発想を持って貰えれば嬉しい。
こっちはこっちで自由な視点から思い掛けない発想を得ることが出来るし、何より小ネタを速く書くことは良い練習になる。

「こないだのあれをちょっと弄ればこんなことできるんじゃないか?」
「このUI,ダサいから自分の好きなようにカスタマイズしちゃおう」
というところまで行けば布教成功。
新たな同志の誕生である。

今のところ出来たのが、
・「選択レイヤーの一つ上に調整レイヤーをつくるスクリプト」
・「シャイ/非シャイレイヤーを反転するスクリプト」
という、かゆいところに手の届くような小ネタばかり。

構想が決まれば30分ほどで完成するので、書いているほうもストレスが無く楽しい。

CS5の話もちらほらと聞こえてきて、OSの64bit化、扱う映像の高解像度化など、
いつまで映像制作をAE完結型で出来るのか、そもそもワークフロー自体も全然違うものが考え得るのではないか。
次を見据えた環境も作らないと、と悩みは尽きないけれど。

まずは、今ある環境を(ちょっとだけ)より良くすることもきっと無駄ではないはずだ。

2009年10月4日日曜日

長すぎる

しかも、イマイチ自分の語り口調としてしっくりきていない。サイズの合わない借り物の服でステージに上げられた子供みたいだ。小林秀雄曰くところの
「全身を血球と共にめぐる」言葉を育てていきたいネ。

2009年10月3日土曜日

2009収穫祭(3)

続いてもう一つ、今回の経験を通して考えた「アニメ撮影における映像表現的側面」について。

・素材か、作品か
撮影という部署は各カットを構成する全ての素材が集まるため、僕はこれまでそれらをあくまで「如何様にでも調理可能な素材」として見てきた。が今回のように沢山の人が参加する作品に参加できたことで、この考え方は少々傲慢ではなかったか、と反省している。
つまり、撮影にとっては素材に過ぎなくても、それを制作した人にとっては大事な完成品だった、ということだ。全く弄らない、ということは無いにせよ、ある程度見栄えに手を加えるのであれば、事前に確認を取っておくべきだったかもしれない(先に挙げたコミュニケーションの問題も絡んでいる)。

どこまで素材を活かすのか、どこまでそれに手を加えるのか。これは(少なくとも僕にとって)いつも頭を悩ませる問題である。きっとその都度、監督、演出の意図を理解し、最善のアウトプットを心掛け、共にそのカットを作る担当者とすり合わせていくことになるのではないか。

・インプットとアウトプット
無い袖は振れない。自分の中に存在しないイメージは決して作り出せない、ということである。アウトプットは実はインプットと殆んど同義だから、如何に多くのイメージを自分の中に取り込んでいくか、ということが撮影としての幅を広げることに直結してくると言えるだろう。
僕は果たして見えているだろうか。自分の言葉で語れなくては言葉を理解したことにはならないのと同じ意味で、そのイメージを理解できているか。結果は一目瞭然である。

インプットすべきもの、演出指示もその一つ。カメラによる撮影時代から確立された「パラ」、「ダブラシ」、「つけパン」といった符丁は、業務をこなす上では一通り身に付けておくべきいわばマナーのようなもの。
しかし、マナーはマナーで身に着けつつも、そこからはみ出た行動が全く出来ないのでは、映像表現もまた凝り固まった時代錯誤のものになってしまいはしないか。現状は、かつての「撮影台の模倣」という一つの約束事に過ぎない、ということを意識のどこかに残しておきたい。

また、先日のプレゼンにて「カラーマネージメント」の問題が指摘されていたが、恥ずかしながらそこまで正確に問題を把握していなかった。多様化した映像再生環境においてどこをターゲットにした絵作りをしていくか、知らなくては、考えて身に着けていかなくてはならないものは幾らでもある。


以上、長い長いまとめひとまず終了。正直今回の仕事の出来栄えは(自分の領分に限って言えば)赤点ぎりぎりだったと思っている。関係者の皆さんゴメンナサイ。
がしかし、これを契機に色々考え、知り、得るものは十二分にあった。いつの日かこれをアウトプットする機会を与えて貰えれば嬉しいです。

2009収穫祭(2)

では前回ポスト分の説明をば。

■1:制作的側面
・管理の効率化、自動化はもはや必須事項(例えばExcelの利用)
・部署内での効率化では効果は限定的、制作全般に渡るシステム構築が理想
・ツールのプロトタイプ化

先日のプレゼンを見ていて思ったのが、現状各アニメ撮影現場においてデータ管理はExcelが主だということ。勿論うちもそうだし、昨日買ったCGWORLD見たらゲーム会社でもEXCELの事例があった。圧倒的事例数が魅力だということか。

そのエクセルも基本機能のみ使って只の製表ソフトとしていては宝の持ち腐れである。やはりVBAを使ってのファイルアクセス(外部データの読み書き)や自動更新によるリアルタイム管理の活用など、「機能に使われるのではなく、ツールとして使いこなす」ことが必要かと思う。
特に今回の劇場版のように大量のデータ(総カット数1400CUT,総データ量1TB弱)を管理するには、こうしたツールを使った自動化は効率の面でも正確性の面でも不可欠だ。つまり、映像制作においては如何に大量のデータを高速、かつ正確に管理するか、という能力も必要となって来る訳である。

勿論、全体的なデータは制作さんが管理してくれるが、そのデータのフィルタリング、及び撮影の内部データの管理はやはり部署内で行うしかない。
その際、(得てして映像制作従事者はこういったデータ管理とか数字とかに苦手意識が強いので)無味乾燥なデータの羅列ではなく、視認性を強めるなどデザインにも気を配れると、仕事場の空気も変えられる気がする。逆効果もあるので諸刃の剣なのは言うまでも無く。

そして、これら管理ツールの機能を機能毎に細分化して、エフェクトのプリセットのようにライブラリ化しておくところまで進めたいと考えている。そうすれば、また新しいプロジェクト毎に0からシステムを構築する必要もなくなるので、そこでの効率化も図れるだろう。
同時に、機能毎に整理されたスクリプト、ツール群は新しくそれを勉強、利用しようとする際の敷居も下げてくれないか、と期待している。0からシステムを組むのは無理でも(勿論、それを勉強しようとする姿勢は絶対に必要だと思うけど)、それを組み合わせること+αで望みの機能が得られるのであれば、自分もやってみようという気に・・・なってくれないかな。


さてここまでは撮影部署内での効率化の話だが、当然アニメ制作はこれ以前、以降にも大量の工程があるわけで、連携が取れていなくては良い物は作れない。
僕は「制作システム自体が制作者の思想を反映する」と考えていて、つまり「各部署の連携が取れてビジョンを共有できるようなシステム」は、「その制作体制を作り上げる存在がゴールを見失わず、それを共有することが大切だと考えたことの何よりの証明」だ、ということである。文字にしてみると何を今更、といった感があるけれど。
混乱する現場とは即ち、指揮官、およびスタッフに明確なビジョンが共有されていないことの現れである。あなたの現場はどうですか?

今回、劇場版の制作に当たっては撮影のみを請け負うスタイルだったのでなかなか制作システムにまで関与することは出来なかったのが反省点。他部署にまで意見するのは難しいけれど、敢えてそこは踏み込むべきなのだと思う。PC上で映像を作ることだけが映像制作ではないのだし。
細かなところではファイルの命名規則から、各カットの各素材が今、どこでどのような状態にあるか共有する手段まで、デジタルアニメ制作が一般化した現在においてシステムの共有は不可欠だ、という意識を共有することが重要であるように思う。


・コミュニケーションの重要性
・各工程における到達点をそれぞれの段階の作業者に明示しておく

上でも触れたが、コミュニケーションの重要性も今回再認識させられた。部署内であれば素材更新の連絡から各カットの最終形のイメージまで、交わされる情報量は細に渡り、かつ膨大である。
特に終盤は修羅場と化し、時間の無い中で微妙なニュアンスを求められるため意識の共有は不可欠で、これらは一朝一夕では醸成出来ない。普段から言葉を交わし、意識を共有するパイプを太くしておくことを心がけたい。
…なんていうと肩が凝りそうだけれど、何のことは無い。せっかく同じ場所にいるんならちょっと一声掛けて、そのうち好き嫌いの話でもしてみましょ、てな感じで。
これらを円滑にするインフラとしてのツール開発も勿論必要だが、決定的なのはそこで交されるものの方であるのは言わずもがな。

直接のやり取りが難しい他の部署とのやり取りであれば、共有すべきイメージをある程度明示することは更に重要になってくる。
例えば、各工程の注意点、到達点を明示しておく。大規模なプロジェクトともなれば初めて参加するスタッフも多いため、細かな仕様まで確認を任せるのは非効率だし危険でもある。押さえ所を最低限に明示しておくのは効果的だと思う。僕のように余計なところまで口を出さないようご注意を。
正直この作業は結構面倒だけれど、ここをいい加減にすると後で泣きを見る、絶対。間違いない。


・思考停止の防止(何を考え、何を自動化するか)
僕は今更言うまでも無く効率優先の姿勢をとっているが、かといって何から何までエクセルで自動化すれば良いじゃない、とまでは思わない。
物の管理、コミュニケーションツール、作業データの基本セットアップまでやろうと思えば結構なところまでボタン一つで出来るようになるが、そもそもこの効率化は作業における人為的ミスを減らし、限られた時間をやりくりして少しでも映像制作それ自体へ手を掛けられるようにするのが狙いである。自動化、効率化が主目的になってしまう危険性は常に意識すべきだと思う。
また、システムの構成員であり、ツールを使うスタッフも、気をつけないと只ボタンを押していくだけの機械になってしまう。そもそもの始まりと目指すべき到達点を見失わないようにする意味でも、上に挙げたコミュニケーションは有意義である。

以上、アニメ撮影の「制作的視点」から見た現状分析。いつもの悪癖で長くなってしまった。
要はアニメを作るに当たって、どこまで見通せているか。そしてそのために必要なものは何だと考えるか。それを(ツールを介した)システムとして実現していけるか。そこがアニメーションを作る際の「制作的」側面から見たポイントなのだと思う。
ということでした。