続いて、今回の劇場版で実感した絵作りの問題点について。
こちらは単純に僕の未熟さから来る失敗談なのだけど、記録しておくことで何がしかの役に立つかも、ということで。
余談だが、人のセミナー等に参加してみて、実は成功例よりも失敗例の方がより問題の本質を把握してもらい易いのではないかと考えている。幸か不幸か、失敗例には事欠かないのだ! (´;ω;`)
さて、今回僕は約20分の劇場版CGアニメーションに「撮影監督」として参加した訳だが、色々と知識、経験、技術が不足していたため問題が発生した。中でも一番問題だと感じたのは
「データ⇒フィルムに焼く際の変化を上手く吸収できなかった」ことである。
今回使用したのは富士のフィルム(型番も撮影所の方に伺ったのだが失念、ちゃんとメモを取っておけ)で、前回使用したのはコダックのフィルムだったと記憶している。
一度フィルムチェックという試し焼きをチェックする機会があったのだが、富士のフィルムはコダックのそれと比べて「全体的にコントラストが強めに出て彩度が高い、特に赤と青が鮮やかに発色する。つまり明るく派手な画面になる」という印象を受けた。
これを受けて、コントラスト、及び赤青中心に彩度を抑え気味にする処理を加えて本番のデータを納品したのだが、彩度に関しては監督からもOKを頂ける程度に調整できたものの、コントラスト、特に暗部の締りが激しく、暗く潰れてしまった箇所が何箇所か出来てしまった。
最終的には、現像の段階で撮影所の方に多少暗部を持ち上げて頂き、監督やプロデューサー、CGディレクターの方々からは特に気にならない程度まで調整はできたのだが、最終的に映像をハンドリングできていないという点で個人的には大きな反省点となった。
といったことをTwitter上でポロッと愚痴ったところ、早速先達の方々にご意見を頂けた。まとめると、
・「現場のモニタと焼いた後のフィルムの色味は必ず変わる」
・「フィルムチェックと現像所との打ち合わせは必須」
(個人的には編集とチェック用の監督のモニタもあわせて調整したいところ)
・「シーン毎に焼き方の調整もして貰えることもある」
(現像所によって違うだろうから、ある程度はこちらで対応できるようになりたいが)
・「暗部は特に難しい。RGB10以下は(30以下という声も;色深度の問題もあるだろうけど)、
特に気を付けている」
大方予想通りではあったが、逆に言えばフィルムであれば常識だったとも言える。もっと事前に相談させて頂けば良かったと反省しきり。
次回(があればの話だが)はこうした点を考慮して、フィルムチェックの段階でこの辺の見極めができるような素材を準備し、焼き上がって「あれ、作業モニタの印象とぜんぜん違う」ということはないようにしたい。
また、例えば撮影所の方からあちらの作業環境のカラープロファイルを頂くことなどはできないものだろうか。最終出力が違う以上、100%揃えることはできないにしても、記憶と目分量に頼るよりは正確な画面設計が出来る気がするのだが…そうした点も踏まえて、事前の準備、関係各所との綿密な相談が必要だということだろう。
ちなみに、色指定、色彩設定の方々はこうした媒体の違いも考慮して色の設計をされるのだろうか。いや、それだとTVオンエア、DVD,BD販売の際問題になるか。となると、色の偏向のない状態でマスターを制作して、それを出力媒体に合わせて調整するのがやはり筋なのか。
今回の作品では、キャラの影はCGソフト側でレンダリングされた時点で既にキャラに描き込まれ、後からそのコントラストや色味を調整するのは難しかったのだが、そこを後からでも調整可能にすることで、上記のような場合での対応のしやすさも変わってくるかもしれない。
と同時に、ますます後工程での絵作りの技術と全体の管理能力が要求されることにもなる訳で、自らハードルを上げることにもなる。他所の部署の方々を説得しうる材料をきちんと準備できないと、「素材の調整はお任せ下さい」と自信を持って言うことは難しい。
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