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2009年6月28日日曜日
ワレ、新システムに移行セリ
真夏の一大決戦に備えて春先からチマチマ武器を作ってきましたが、そのメインシステムの試作版がとりあえず完成、半月前から実戦投入を始めました。
その正体は、至る所のスタジオで独自実装されているであろう「AfterEffectsによるアニメコンポジット(撮影)」の作業支援スクリプト(.jsx)です。うちの奴はExcelによるカット管理表と連動して、各カット毎のセットアップを自動化します。(何を今更って?まあ、そこはそれ、いろんな事情があった訳で)
ちなみに、良くある30分のTVアニメでは大体1話300カット前後、といったところでしょうか。それぞれのカットの背景、キャラ、その他特殊素材といった「構成要素」を、AfterEffects(AE)上で合成、一つの「映像」に纏め上げる訳です。
そのファイル数は優に万を超え、さらに制作状況によってはリアルタイムで更新されていきます。素手で立ち向かうは余りに無謀というものです。
また、この工程で最終的に求められるのは上記の「映像構築能力」だと思いますが、前提としてその膨大な素材を取り扱う作業が各カット毎にルーチンワーク的に発生します。ここを如何に効率的に処理し、本来の映像制作作業に時間と脳みそを割り当てるか。この認識がある故に、おそらく各社各様の「作業支援システム」が作られているのではないでしょうか。(各社各様というところに、そも全体としてシステマチックになりきれていないアニメ制作工程の問題があるとも言える気もしますが)
閑話休題。
とりあえずうちの子は現在手がけている作品固定で組んであるのでなかなか融通の利かない頑固者ですが、限られた条件下では結構な働きをしてくれます。(一応機能別にパーツ分けしてあるので、他作品への転用も比較的簡単に対応できる予定、つまり未定)
流れとして、
1;カット毎の情報ファイル書き出し(これはカット表上のVBAマクロで)
2;AEで情報ファイルを解析、それに従って素材の読み込み、配置、シーン毎に設定された処理掛け、及び作業ファイル(aep)の名称や尺設定、指定場所への保存(こちらを今回のスクリプト(.jsx)で)
をほぼ全自動で処理します。
各コンポジット作業者の手元には、「担当カットが作業可能になった段階」で「仮組みされた作業データ」が提供される、ということになります。作業者の能力よりもスピードと正確さを要求される処理を自動化することで、作業の効率化と正確化、それにより期待される映像的表現の向上を目指そう、という狙いです。
時間的には、上記2の工程、AE上で情報ファイルを読み込んでから一連の処理をこなしてデータを保存するまで30秒は掛かりませんでした。「手作業で処理する場合との時間差」*「カット数分」の時間を人の手によるオペレーションに割り当てることが可能になる計算です。
半月ほど実践稼動してみて、いろいろと課題も見えてきました。作業の効率化、及び統一性の向上、という点は時間の無いTV制作の中では非常に大きい。(極端なケースでは作業量が倍になった、という例もあります。今までどうやってたんだ…)また、処理の統一性の向上はチェック担当者としてはありがたいものです。
が、問題点としては運用の機動性も指摘されました。一度動き出すと速いし効果も大きいのですが、データを収集、整理する段階でまだまだ効率化を追求する余地が多分にある。現場ではこのシステムをよく大型エネルギー砲(某巨大宇宙戦艦のアレとか、某八島作戦のアレとか)に例えてました。曰く、撃てれば圧倒的だが撃つまでが大変・・・」
むむむ…それは本意ではない。あくまで映像制作上のストレスを緩和する為のシステムが(規模は小さくとも)新たなストレスの温床となっては本末転倒です。
この解決策として、工程の見直しとスクリプト処理の高速化、そして(大型エネルギー砲に対して)小型携帯火器、つまり「全体として作動するシステムに連動して機能する個人レベルでのスクリプト群」を構築しているところです。
この、一度ではスパッと現状を打開できないあたりが僕の現在におけるシステム構築能力の限界、といったところでしょうか。傍から見れば亀の歩みにも見えそうですが、少しずつバージョンアップして「美しい=理に適った映像制作システム」を構築していきたいと思います。
(そして忘れてはいけないのが、このシステムがあくまで映像制作「支援」目的だということ。システムを構築しただけで出来上がる映像が良くなる訳ではない。本来の眼と腕も常に磨き続けなくては。)
そろそろ夏の最前線の地響きがしてきました。戦局はどうやらかなり厳しいようで、各地から厳しい情報が寄せられてきます。戦場の徒花にならないよう、戦術を磨き、兵を鍛え上げ、人事を尽くして天命を待ちたいと思います。死亡フラグなんてへし折ってやる!!
2009年6月21日日曜日
知人紹介
いつの間にか旧友がブログにて紹介してくれていたので、返礼も兼ねてこちらでも紹介。
NEWADVENTURE―未来航路―
イサイ氏は専門の同期ですが、同い年ということも含め妙に意見があったり、逆にどうしても折り合いがつかなかったりと面白い存在です。
単純な映像制作技術だけでなく、創るものの方向性から生き方、在り方まで真似は出来ませんしする気もありませんが、今後もたまに会ってああだこうだ言い合えればいいね、と。願わくば自分もそういった人たちに対して刺激的な存在であり続けたいものです。
まだ未見の方は、宜しければ彼の『めぐり逢う世界-world comes around-』を見てみて下さい。凸凹(失礼!)ではあるけれど、結構貴重な「作者の匂いのする」映像作品だと思うのです。
NEWADVENTURE―未来航路―
イサイ氏は専門の同期ですが、同い年ということも含め妙に意見があったり、逆にどうしても折り合いがつかなかったりと面白い存在です。
単純な映像制作技術だけでなく、創るものの方向性から生き方、在り方まで真似は出来ませんしする気もありませんが、今後もたまに会ってああだこうだ言い合えればいいね、と。願わくば自分もそういった人たちに対して刺激的な存在であり続けたいものです。
まだ未見の方は、宜しければ彼の『めぐり逢う世界-world comes around-』を見てみて下さい。凸凹(失礼!)ではあるけれど、結構貴重な「作者の匂いのする」映像作品だと思うのです。
2009年6月7日日曜日
見てきました「Cirque du Soleil ”Zed”」
先週末にウチの会社企画で舞浜まで行って見てきました。
Cirque du Soleil ”Zed”
いやあ、こういう目的があると仕事が捗ります。
十数年ぶりに舞浜駅を見て、そのあまりのメルヘンっぷりとミスマッチな「JR舞浜駅」の文字が印象的でした。
閑話休題。
当日は突然の電車遅延もあって時間ギリギリで到着。
5分前の入場で客席はほぼ満員、Zedの為に作られたという常設シアターは、ステージと客席がほぼシームレスになっており、客席の勾配も自然で全体的に一体感を感じる良いデザインです。
「古代の天文観測儀(アストロラーベ)からインスピレーションを得てデザインされた」ということでさもありなん。勿論本編の内容もすばらしいのですが、個人的にはこのステージセットを構築できた段階で半分は成功が約束されたようなものだと思います。
(がしかし、このステージが真価を発揮するのは幕が開いてからなのですが…そこは各人の目で)
途中休憩を挟みますが、一度動き出すと時がたつのはあっという間。もう、舞台を見ているんだか演劇なんだかサーカスなんだかだんだん分からなくなってくるけれど、とにかく楽しい。Exciting!!というのが一番しっくりくる感じです。ジャンルは良く分からないけれど、要はエンタテインメントなんだな、と。
超一流のアクターによる誤魔化しようの無いリアルタイムなパフォーマンス、それを支える確かな演出、そして観客に見えないところで駆使されているであろう膨大な技術。このステージを成立させる為にどれだけの人たちがそれぞれ異なった能力を注ぎ込んでいるのだろうか。その場の興奮から一呼吸おいて考えてみると、ちょっとクラッと来ますね。
映像業界の末席に連なる身としては、やはりビジュアルな演出が気になりました。今回特に上手いなあ、と思ったのは光と影のコントロール、そして舞台の構造を巧みに利用した多層的展開です。以前Terraon氏が「多層エンターテインメント舞台」と書いていましたが、まさにそんな感じです。空間も、演出も、時間すらも?同時多層的に展開され、観客を魅了して止まない。言うは易くも行うは難し。それを非常に高いレベルで見せ付けられた感じでした。
そしてもう一つ、音楽について。Zedでは基本音楽も一つのパフォーマンス要素として扱われているようです。ドラムやギターといったバンドスタイルからパーカッション、バイオリンといったソロスタイルまでが時に舞台上を駆けながらアクターたちと競演している。その音楽は時にアクター以上に雄弁で(バイオリンのノリノリっぷりなんてもう!)、音による「人々のパッションを纏め上げる力」を十二分に実感できる光景でした。
(しかしアクターさんたちはあんなテンポのずれた手拍子の中でよく集中力が切れないもんだ、と余計な感心もしたり)
休憩時間に流れていた音が妙に気になったのですが、あれ何だったんだろう?ヴィブラフォンじゃないの?という指摘を社内の若い子に聞いたんですが。ご存知の方、教えて下さい。
総じて、非常に楽しい時間でした。何かしら仕事に活かせるものを得てやろう、といったちっぽけな意図は舞台の幕が開いた途端にどこかに行ってしまいましたが。それも含めて、フィードバックフィードバック。
エンタテイメントに関わる人は体験しておいて損は無いと思います。
自分ももう一度…行けるかな???
Cirque du Soleil ”Zed”
いやあ、こういう目的があると仕事が捗ります。
十数年ぶりに舞浜駅を見て、そのあまりのメルヘンっぷりとミスマッチな「JR舞浜駅」の文字が印象的でした。
閑話休題。
当日は突然の電車遅延もあって時間ギリギリで到着。
5分前の入場で客席はほぼ満員、Zedの為に作られたという常設シアターは、ステージと客席がほぼシームレスになっており、客席の勾配も自然で全体的に一体感を感じる良いデザインです。
「古代の天文観測儀(アストロラーベ)からインスピレーションを得てデザインされた」ということでさもありなん。勿論本編の内容もすばらしいのですが、個人的にはこのステージセットを構築できた段階で半分は成功が約束されたようなものだと思います。
(がしかし、このステージが真価を発揮するのは幕が開いてからなのですが…そこは各人の目で)
途中休憩を挟みますが、一度動き出すと時がたつのはあっという間。もう、舞台を見ているんだか演劇なんだかサーカスなんだかだんだん分からなくなってくるけれど、とにかく楽しい。Exciting!!というのが一番しっくりくる感じです。ジャンルは良く分からないけれど、要はエンタテインメントなんだな、と。
超一流のアクターによる誤魔化しようの無いリアルタイムなパフォーマンス、それを支える確かな演出、そして観客に見えないところで駆使されているであろう膨大な技術。このステージを成立させる為にどれだけの人たちがそれぞれ異なった能力を注ぎ込んでいるのだろうか。その場の興奮から一呼吸おいて考えてみると、ちょっとクラッと来ますね。
映像業界の末席に連なる身としては、やはりビジュアルな演出が気になりました。今回特に上手いなあ、と思ったのは光と影のコントロール、そして舞台の構造を巧みに利用した多層的展開です。以前Terraon氏が「多層エンターテインメント舞台」と書いていましたが、まさにそんな感じです。空間も、演出も、時間すらも?同時多層的に展開され、観客を魅了して止まない。言うは易くも行うは難し。それを非常に高いレベルで見せ付けられた感じでした。
そしてもう一つ、音楽について。Zedでは基本音楽も一つのパフォーマンス要素として扱われているようです。ドラムやギターといったバンドスタイルからパーカッション、バイオリンといったソロスタイルまでが時に舞台上を駆けながらアクターたちと競演している。その音楽は時にアクター以上に雄弁で(バイオリンのノリノリっぷりなんてもう!)、音による「人々のパッションを纏め上げる力」を十二分に実感できる光景でした。
(しかしアクターさんたちはあんなテンポのずれた手拍子の中でよく集中力が切れないもんだ、と余計な感心もしたり)
休憩時間に流れていた音が妙に気になったのですが、あれ何だったんだろう?ヴィブラフォンじゃないの?という指摘を社内の若い子に聞いたんですが。ご存知の方、教えて下さい。
総じて、非常に楽しい時間でした。何かしら仕事に活かせるものを得てやろう、といったちっぽけな意図は舞台の幕が開いた途端にどこかに行ってしまいましたが。それも含めて、フィードバックフィードバック。
エンタテイメントに関わる人は体験しておいて損は無いと思います。
自分ももう一度…行けるかな???
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